「親がB型肝炎患者で、自分はそのB型肝炎ウイルスに二次感染したようなのだが、このような二次感染でもB型肝炎給付金は支給されるんだろうか。」
B型肝炎給付金は、幼少期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに持続感染した一次感染者のみならず、一次感染者から母子感染または父子感染した二次感染者でも支給されます。
ただし、二次感染者としてB型肝炎給付金が支給されるためには、母親または父親が一次感染者としてのB型肝炎給付金の受給要件を満たしており、かつ、母子感染または父子感染によってB型肝炎ウイルスに持続感染したことを訴訟で証明する必要があります。
本記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- B型肝炎訴訟とは
- 二次感染がおこる原因
- 二次感染者としてのB型肝炎給付金の受給要件
B型肝炎訴訟とは?
B型肝炎訴訟とは、幼少期に受けた集団予防接種等における注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに感染してしまった方等が、国に対してその賠償を求める訴訟をいいます。
幼少期に受けた集団予防接種等における注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに感染してしまった被害者5名が、1989年、国に対してその賠償を求める訴訟を提起し、2006年の最高裁判決により、国の責任が裁判所により認められることとなりました。
その後、2011年6月に国と全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団との間で救済の要件や金額等について定めた「基本合意書」が締結され、2012年1月13日に、国との間で裁判上の和解が成立すれば、被害者等に対して給付金等を支給することを内容とした「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」(以下、「特措法」といいます。)が施行されるに至りました。
B型肝炎給付金を受給するには、国を相手として国家賠償請求訴訟を提起し、その中で国との和解を成立させ、社会保険診療報酬支払基金に対して給付金を請求する必要があります。
次が、B型肝炎給付金を受給するまでの大まかな流れとなります。
そもそもなぜB型肝炎は二次感染が起こるの?
B型肝炎ウイルスの感染原因には様々なものがありますが、そもそもなぜ母子感染や父子感染が起こるのでしょうか。
(1)母子感染の場合
B型肝炎ウイルスに感染した母親の産道や胎内で子どもに感染してしまうことを母子感染といいます。
B型肝炎ウイルスは、血液を媒介として感染する可能性のあるウイルスですが、出産時に産道についた傷からの出血などによって、新生児へB型肝炎ウイルスが感染する可能性があります。
また、B型肝炎ウイルスは胎内感染するともいわれています。胎内感染とは、妊娠中の胎児にウイルスが感染することをいいます。
新生児や胎児は免疫機能が未熟のため、B型肝炎ウイルスを体内からうまく排除することができず、B型肝炎ウイルスに感染した場合、そのほとんどがB型肝炎ウイルスに持続感染することになります。
(2)父子感染の場合
B型肝炎ウイルスは、汗、涙、唾液、粘液、排泄物にも存在しており、これらを媒介として人に感染することがあると報告されています。
そのため、子どもと同居し密接な生活をおくる父親の体液等を媒介として、父親から子どもにB型肝炎ウイルスが感染する可能性があります。
国は、免疫力の弱い乳幼児期に、父親が食べ物を口移しで与えた場合、唾液を媒介として、子どもにB型肝炎ウイルスが感染する場合があることを認め、父子感染の方についても二次感染者として給付金の受給対象となることを認めることとしています。
一次感染だけでなく二次感染でも給付金は支給されるの?
B型肝炎給付金は、幼少期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに持続感染した一次感染者だけでなく、このような一次感染者から母子感染または父子感染した二次感染者にも支給されます。
B型肝炎給付金の給付金額は、次のとおりです。
死亡・肝がん・肝硬変(重度) | 除斥期間等が経過していない方 | 3600万円 |
除斥期間等が経過している方 | 900万円 | |
肝硬変(軽度) | 除斥期間等が経過していない方 | 2500万円 |
除斥期間等が経過している方のうち、現に治療を受けている方等 | 600万円 | |
除斥期間等が経過している方で、上記以外の方 | 300万円 | |
慢性肝炎 | 除斥期間等が経過していない方 | 1250万円 |
除斥期間等が経過していない方で、現に治療を受けている方等 | 300万円 | |
除斥期間等が経過していない方で、上記以外の方 | 150万円 | |
無症候性キャリア | 除斥期間等が経過していない方 | 600万円 |
除斥期間等が経過している方 | 50万円+定期検査費の支給等の政策対応 |
※2020年4月1日より、改正民法が施行されています。改正前民法724条の「20年」の期間は、この除斥期間と考えられていましたが、改正民法724条柱書では「時効」という文言が用いられており、消滅時効であるとされています。
上記の表をご覧いただけると分かりますが、給付金額は病態により異なります。
また、除斥期間等の経過の有無によっても給付金額は異なります。損害賠償請求権は、加害行為時または損害発生時から20年の経過により消滅してしまうのですが、これでは被害者救済に欠けるという観点から、特措法は、除斥期間等の経過によって損害賠償請求権が消滅してしまった被害者に対しても、給付金請求権を認めた上で、その金額を減額するにとどめています。
なお、B型肝炎給付金について、弁護士に依頼された場合、上記の表の給付金額とは別に、給付金の4%が訴訟手当金として支給されます。
二次感染でB型肝炎給付金を受給する場合の要件は?
B型肝炎給付金の支給を受けるためには、所定の要件を満たす必要があり、訴訟では、その要件を満たすことを証明するための証拠を提出する必要があります。
(1)母子感染と認められる要件
母子感染による二次感染者としてB型肝炎給付金を受給するための要件は次のとおりとなります。
- 母親が次の一次感染者の要件をすべて満たしていること
-B型肝炎ウイルスに持続感染していること
-満7歳の誕生日の前日までに集団予防接種等を受けていること
-集団予防接種等で注射器の連続使用があったこと
-母子感染ではないこと
-その他集団予防接種等以外の感染原因がないこと
- 二次感染者がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 次のアイウのいずれかから、二次感染者の感染原因が母子感染であるといえること
ア:母子のB型肝炎ウイルスの塩基配列が同定されていること
イ:出生直後の時点でB型肝炎ウイルスに持続感染していたことを明らかにできること
ウ:父子感染等の母子感染以外の感染原因がないこと
(2)父子感染と認められる要件
父子感染による二次感染者としてB型肝炎給付金を受給するための要件は次のとおりとなります。
- 父親が一次感染者の要件をすべて満たしていること
- 二次感染者がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 二次感染者の感染原因が父子感染であるといえること
【まとめ】B型肝炎の二次感染者でもB型肝炎給付金は支給される
本記事をまとめると次のようになります。
- B型肝炎給付金とは、幼少期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに持続感染した方等が、国に対してその賠償を請求する訴訟を提起し、その訴訟で国との間で裁判上の和解を成立させることによって受給することができる給付金をいう
- B型肝炎給付金の給付金額は、最大で3600万円となり、病態の種類や除斥期間等の経過の有無によって金額が異なる。また、弁護士に依頼した場合、給付金とは別に弁護士費用が支給される
- B型肝炎給付金は所定の要件を満たすことで、母子感染または父子感染した二次感染者にも支給される。
アディーレ法律事務所では、ご依頼いただいた場合、B型肝炎訴訟の資料収集の代行(※)から、B型肝炎訴訟、同給付金の申請まで代わりに行います。
(※)母子手帳など、弁護士では収集できない一部資料を除きます。
また、アディーレ法律事務所では、B型肝炎訴訟・給付金請求に関し、着手金、相談料はいただいておらず、原則として報酬は給付金受け取り後の後払いとなっております。
なお、B型肝炎給付金の支給が決定すれば、和解協議にあたり、弁護士等に報酬を支払った方に対して、各給付金額の4%の額が訴訟手当金として国から給付されます。
B型肝炎訴訟・給付金請求に関しては、B型肝炎訴訟・給付金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。
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